トライノート トークライブ Vol.1「ゲーム音楽ライター」に訊く

<前ページより>

質問に答えるコーナー

音楽を文字で伝える難しさや工夫してる点

Sinon:

えー、それでは、後半はトライノートメンバーから頂いた質問を中心に、hideさんの深いところをいろいろ掘り下げていきたいと思います。
まず、ゲームのグラフィックとかはスクリーンショットとかムービーで伝わるじゃないですか。hideさんはゲームの音楽を文字で伝えているわけですけれども、文字で音楽を伝えることについて、たぶん難しさとかあると思うのですけども、その難しい点とか工夫してる点とかそういったものはありますか?

hide:

まず前提として、音楽というものを文章で書き表すというのは難しいことだとわかっているんです。
基本的には、自分の心で感じたことを言葉にしているんですけど、僕は音楽的な知識がそれほどあるわけではないので、音楽に詳しい人から見ると表現が拙い部分もあると思います。
ただ、記事を世の中の多くの方に読んでいただくにあたっては、ゲームそのものについても音楽的な意味でも、あまりマニアックにしすぎずに、できるだけ一般的な目線を残すことによって、敷居の低さや親しみやすさといったものを出した方がいいのかなと僕は思っているんです。
もちろん、音楽的な勉強をもっとすれば、より深堀りした記事は書けると思うんですけど。あえて一般的な目線を残して書いた方が、より多くの方に記事を楽しんでいただけるのかなと思っていますね。

Sinon:

マニアックにしすぎると、音楽について特に詳しくない一般のゲームファン、ゲーム音楽ファンが離れていっちゃうかも知れない、と?

hide:

そうですね。

Sinon:

じゃあ、仮にhideさんの姿勢をわかってない人が居たとして「このライター、音楽のこと全然わかってないなー!」みたいに言われたとしても、そこは割り切って?

hide:

はい、そこは割り切っています。

(参加者):

hideさんの言う、音楽的な勉強というのは、どういうことをイメージされてますか?

hide:

楽典を読んだりして、音楽の専門用語や音楽を作る上での技法を学んだりするといったところですね。

Sinon:

どんどん突き詰めていくと、もっとゲーム音楽を専門的に分析も出来ると思うんですよね。「この作曲家はこのモチーフを中心に、こういう技法を用いてうんぬん…」とか。

hide:

そうですね。ただ、あんまりマニアックにしすぎると、読者の方がついてこれないというか、とっつきづらくなってしまうと思っていて。
僕は連載記事で『ドラゴンクエストVI』の音楽について取り上げたことがあるんですけど、あの作品には「悪のモチーフ」という曲があって、ゲーム中、戦闘曲やダンジョン曲といった敵に関連するシーンの音楽には、すべてそのモチーフが入っているんですよ。音楽的なことを絡めて紹介するのは、そういった初歩的なものまででとどめています。

Sinon:

マニアックにしすぎると一部の詳しい人は食いつくかもしれないけど、そうはしていない、ということなんですね。

記事を読むターゲット層について、どう捉えているか

Sinon:

記事を書くのは音楽にあまり詳しくない人に向けて、という話でしたけども、関連した質問で、「記事を読むターゲット層」というのはどういう風にとらえているのでしょうか。
さっきのINSIDEさんの連載とかでしたら、そのゲームをプレイしたファンに向けてなのか、それともそのゲームも音楽も全然知らないよという人たちに向けてなのか、どちらの比重が高いんでしょう?

hide:

連載記事は、ゲームのニュースサイトで担当していたものだったので、ある程度はゲームをプレイしている人向けに書いていました。ただ、あの連載はINSIDEさん以外のサイトにもニュースフィードで配信されていたので、普段はそんなにゲームをやらない人が記事を読んだとしても、「ちょっと面白そう」と言ってゲームを手に取ってもらえたらいいな、くらいの感覚でしたね。

Sinon:

ゲームを全く知らない人がINSIDEさんを見にくることはあまりないので前提としてはゲームファンと。

hide:

はい。ある程度ゲームが好きな方向けにという。

Sinon:

ゲームそのものの前提知識は、あまり必要としないような記事構成にしてるんですか?

hide:

そうですね。僕が記事を書くときに注意していることとして、音楽を紹介する前に、ある程度ゲームそのものの世界観や物語も紹介するようにしています。ゲームを遊んだことがない人でも、ゲームのことを知ってもらって、「こういうゲームなんだ」とわかってもらえるように。あとは、すでにゲームをプレイ済みの人が読んだら「そうそう!」と共感してもらえるような記事にしたいというのは常々思っています。

Sinon:

ある程度ゲームをプレイした人にしか通じないようなネタも入れたりしますか?

hide:

そうですね。わかる人がニヤリとするようなバランスで、そういうネタを入れることもあります。ただ、基本的には未プレイの人が読んで興味を持ってもらえるように、というのを気をつけていますね。

文章を書くとき、語彙が似たり寄ったりになるのを防ぐテクについて

Sinon:

私自身が教えて欲しいのですが、例えば「このゲームはフィールド曲がすごくかっこよくて!バトル曲も最高にかっこいいんですよ!ボスバトル曲は超かっこよくて!」みたいな「かっこいい」しか言っていないものでは記事にならないじゃないですか(笑)。その語彙が似たり寄ったりになるのを防ぐテクニックみたいなのはあるんですか?

hide:

それ、結構あるんですよ。「あれ、この文章は前と同じ言い回ししてないか!?」みたいなことがちょいちょいあったりするんです。「この文章、前も書いたな」みたいな(笑)。
それをなるべく防ぐためにどうしているかというと、類語辞書というものを使っています。あるひとつの言葉と近い意味の言葉や、異なる言い回しがずらっと色々並んでいるんですね。文章の言い回しが似てしまったときは、類語辞書を引いてみて、「こっちの言葉のほうが、意味が伝わりやすいな」という言葉に置き換える、というふうに工夫しています。

Sinon:

文章の基本として、同じ言い回しがずっと繰り返されるのはやっぱり避けた方がいいみたいな感じでしょうか?

hide:

はい、同じ表現が続くのは、出来る限り避けたほうがいいですね。

Sinon:

この人、毎回心が震えてないか……?みたいな(笑)。
例えば、同じ「かっこいい」を言うにしても、……「血が滾るような」とか?

hide:

あー、その表現、戦闘曲でわりと使います(笑)。

今まで受けた仕事について

Sinon:

先ほど連載記事について伺ったときに、全部hideさんのオススメタイトルが記事になっているということでしたけど、今までにあまりプレイしていないゲームとか、自分が全然詳しくないゲーム音楽作曲家さんの仕事の依頼とかって、来たことはないんでしょうか?

hide:

ありますね。

Sinon:

そういうお仕事が来た場合はすごい調べて取り組むのか、それとも「ちょっと僕、それわからないのでパスです」みたいになるんでしょうか?

hide:

いえ、基本的にはどんな仕事でもお受けします。いただいた仕事は断らない主義なので。もしプレイしたことがないゲームに関する仕事であれば、ある程度時間が取れる場合は事前にプレイします。取材日まで時間がない場合は、プレイ動画とかPVとか、ある程度音楽や世界観がわかる資料を可能な限り見ます。

Sinon:

なるほど、情報を仕入れるだけ仕入れてしっかり取り組むと。
ちなみにゲーム音楽以外で、たとえばゲーム自体の紹介記事を書いてみない?みたいな依頼は来ないんでしょうか?

hide:

ゲーム音楽以外では、新作ゲームの紹介記事も少し書いたことがありますね。編集部からゲームの説明資料や画像素材をいただいて、こちらでレイアウトを組んで文章を書いて、「こういうゲームが出ます」みたいな記事を作っていました。

Sinon:

レイアウトを組むのもhideさんがご自分で?

hide:

はい、やっていました。見開き2ページ分の専用の用紙があって、それに、「ここに文章を載せる」とか、「ここに写真を載せる」みたいなものを手書きで書いて指定するんですよ。その後、デザイナーさんがDTPで誌面を作ってくださっていましたね。

Sinon:

へー……、レイアウトのラフまでライターさんが作るんですか。
枠組が送られてきて、この枠の中に入るように文章だけお願いします、みたいな流れではないんですね。

hide:

僕がやったときはそうではなかったですね。レイアウト段階から作らせていただいていました。

紙媒体の記事で文字を削り込む作業について

Sinon:

Webの記事だと文字数はいくらでも伸ばせるじゃないですか。 その点、雑誌の誌面だと文字数は限られてくると思うのですが、その文字数を削り込む作業って結構頑張ってやってるんでしょうか?

hide:

めっっっっちゃありました!(笑) 「このお話はすごく面白いから載せたいな」と思っても、ページ数が限られているので、「あっ、ダメだ、載せられない」と断腸の思いで切ったお話はいくつもありますよ。「面白い話なのに……もったいない……!!」と思いながら泣く泣く切っていました(笑)。

Sinon:

Webベースの記事だと文字総量はあまり考えずバーンと載せちゃうんでしょうか? それともやっぱり長すぎるとカットしたりしますか?

hide:

Webだとある程度自由ですが、全く何も考えないわけではないです。ある程度のまとまりで文章を区切って見出しを入れたりして、読みやすくなるように工夫しています。

Sinon:

無制限に長すぎたらみんな飽きちゃったりするんですかね。

hide:

はい。あまり長すぎてもいけないので。

Sinon:

なるほど。
ちなみに、ゲームとかすら関係ない、別分野のライターのお仕事が依頼されるということはないんでしょうか?

hide:

ゲーム以外の記事ですか?今のところないですね、そういうのは。

Sinon:

たとえば「食のレポートをちょっと書いて」みたいな依頼がきたら、喜んでやるんでしょうか?(笑)

hide:

はい、基本的にいただいた仕事は断らないです。……公序良俗的に怪しい案件じゃなければ、よろこんでお受けします(笑)。

昔からライターのような仕事をしたかったのか?

Sinon:

hideさんは仕事として受けるより前に、こういったライターとか文章で表現するような仕事をやりたかったと思っていたことはあるんですか?

hide:

いま振り返ってみると、おぼろげながらあったのかもしれませんね。昔のことを思い出してみると、僕は小学校のときに、なにかの文集用の作文で原稿用紙十数枚ぶんくらい書いてましたから。

Sinon:

それは、読書感想文とかじゃなくて、オリジナルストーリーのものですか?

hide:

物語的なものではないですね。今で言うエッセイ的な、僕が思ったことみたいなとりとめのない話を、十数枚くらい書いたのはおぼろげながら覚えてるんですよ。具体的にどんな内容なのかは忘れましたけど(笑)。そんなことがありました。
あと僕、漢字もすごく好きだったんですよ。中学生のころの放課後に、教室の黒板を使って、魚偏の漢字をいくつ書けるかみたいな対戦を友達とやっていましたし(笑)。
今思えば、ブログを10年以上書き続けているのも、ライターになったのも、文章を書くことが昔から好きだったからなんでしょうね。もし書くことが苦手だったら、こんなに続けられていないと思うので。

個人ブログとニュースサイトでの違い

Sinon:

さっきも話の流れでちょっと出てきた気がするんですけど、ブログで書いてる記事と、ちゃんとしたニュースサイトの記事とかって、心構え的には結構違うのでしょうか? それとも趣味のことを話してるから気持ち的には同じ心構えで書いていますか?

hide:

あ~、やっぱりアウトプットするものとしては違いますね。ニュースサイトとか、そういうちゃんとしたところで公開される記事は、言葉遣いが整ってなければいけないので、かなり気を遣います。その分、個人ブログに書くときは、まったく何も考えないわけじゃないですけど、それほど気を遣わずに書けるので気が楽ですね。

hideさんが好きな文章

Sinon:

hideさん以外にも、世の中にライターさんはたくさんいるわけですけど、このライターさん尊敬してるとか、この人の文章好き!みたいなのはあったりするんですか?

hide:

ライターさんで尊敬している人はいないんですけど、書かれる文章が好きなのは、植松伸夫さんです。FFシリーズのサントラのライナーノーツを読んだことのある方はご存知かもしれないですけど、あの方の書く文章ってすごく自然体で、かつ共感できることがいろいろ書いてあるんですよ。FF8のサントラのライナーノーツは、今でも落ち込んだときとかに読み返します。すごくいいことが書いてありますよ。

文章を書くことのススメ

hide:

ちょっと話が横道にそれるんですけど、文章を書くのはオススメですよ。文章は、時々書いたほうが、自分のことを見直すためのきっかけになります。

Sinon:

文章は自分を見直すきっかけ……、それは文章を書いていく途中で、自分の考えがまとまるといったような?

hide:

はい。自分の考えていることを、文章という形でアウトプットすることによって具体化できますし、文章を書いてある程度時間が経った後に読み返すことで、当時自分が考えていたことを思い返すこともできます。

Sinon:

あのとき俺はこんなことを考えていたんだ、若かったな……。みたいな?

hide:

そうそう、そういう感じですね。

Sinon:

皆さん、文章を書くのオススメだそうです!

他の方の記事について

Sinon:

他の方の記事というのは気になるものなんでしょうか。インタビュー、レポートどっちでもいいんですけども、他の方の記事をみたりして「あっ、この表現上手い!もらい(笑)」みたいな?

hide:

たまにありますね(笑)。

Sinon:

hideさんの性格的にあまり無い気もしますが、他の方の記事をみて「うーん、僕だったらこう書くのになー」みたいなのとかは?

hide:

そういうのはないですね(笑)。他の方が書いたいい文章を読んだときに「あっ、この表現いいな」と思って参考にすることはありますけど。

Sinon:

他の人が書いてるレビュー記事とか演奏会レポートみたいなのは、やっぱりチェックしちゃいますか?

hide:

はい、時々見ますね。

Sinon:

それは勉強にもなるし、純粋に興味があってって感じで?

hide:

そうですね。

へにょさんの質問…からいろいろ派生

Sinon:

じゃあ次の質問。

hide:

はい。

(参加者):

ラジオみたい。

一同:

(笑)

Sinon:

(急にラジオ番組風に) 次はラジオネーム、へにょさん(*4)からのお便りです。hideさん・Sinonさんこんにちは。

(*4) トライノートメンバー。

hide:

こんにちは~。

Sinon:

「私はインタビューを担当した際、ゲーム音楽以外の音楽全般への見識の浅さを少し不安に感じていました。hideさんはそのようなことを感じたことはありますか?」
いかがでしょうか?

hide:

ありますね。やっぱりそれはあります。

Sinon:

インタビューをしていて、例えば、「ロックバンドのなんとかってバンドが僕は好きでね」みたい話題になったのに(……ヤバイ、知らない!)とか。

hide:

はい。そういう意味だと、やっぱりなるべく幅広く知っていた方がいいでしょうね。

Sinon:

音楽全般の知識についても、先ほど言っていた、詳しくなくても素人の人目線で聞いたり話したり書いたりできるし、というのはあるんですか?

hide:

なるべく一般的な目線は忘れずにいたいんですけど、そこで止まっちゃうのも違うと思っていて。自分にできる範囲で幅広く知識を吸収し続けていきたいと思っていますね。たとえば作曲家さんが若いころに影響を受けたアーティストについてのお話をインタビューで掘り下げていく場合は、やっぱりそういう知識があった方がいいでしょうし。

Sinon:

じゃあ、へにょさんへのお答えとしては自分のできる範囲で吸収しつつ、かといって自分らしさを失わずというような。

hide:

そうですね、はい。へにょさんはレトロゲームにお詳しいですし、そういう強みや自分らしさは大切にした方が良いと思います。

Sinon:

ということだそうです、へにょさん。

スマホゲームの音楽について…から色々派生

Sinon:

お次は「スマホゲームの音楽についてどう思うか」という質問が来ています。

hide:

あ~。

(参加者):

hideさんの書いた連載記事の中にひとつスマホゲームがありましたね。『勇者ヤマダくん』。

hide:

はい、そうです。書きました。これ、ゲームとして面白いですよね。なぜ連載で取り上げたかというと、世界観や音楽を含めてよくできているからなんですよ。

Sinon:

ゲーム内に植松さんが出てくるっていうのは、この『勇者ヤマダくん』でしたっけ。

hide:

ですです、植松さんが登場します(笑)。僕の中ではコンシューマーゲームとかスマホゲームで特に区別していなくて、大事なのはひとつの作品として世界観や音楽がちゃんとできているかどうかなんですよ。だからスマホゲームだからどうこう、なんて決めつけは一切していません。『アナザーエデン』とか、スマホのゲームでもちゃんと世界観や音楽をしっかり作っている作品もありますから。

Sinon:

結局のところ、スマホってただのプラットフォームでしかないですもんね。『グランブルーファンタジー』とかは規模が別格ですが、音楽にもコンサートにもお金をしっかり掛けていたりしますし。
あ、でも、スマホゲームについてよく言われるのが、外でプレイするときには音出さないから、ユーザーは音楽を聞かないのでは? といった話はありますね。

hide:

ああ~。

Sinon:

そうすると、ゲームプレイと一緒に音楽を楽しむというユーザーが少ないのかも?と。

hide:

そうなんですよね。例えば外出時にスマホでゲームをやるときに、ちゃんとイヤホンをつけて音楽を聴く人ってどのくらいいるのかなって思っているんです、常々。仕事の移動時間とか、そういうちょっとした時間にゲームをやるとして、ガッツリ音楽を聴く人って果たしてどのくらいいるんだろう……?と。

Sinon:

調べた訳ではないですが、スマホでゲームを遊ぶときに音楽を聞かないユーザーも割といる気はするんですよね。
ただその一方で、『アナザーエデン』のようなコンシューマースタイル……というのかな、そういうゲームタイトルもどんどん出てきていたりして。
この先、スマホゲームとかゲーム音楽ってこうなっていくんだろうな。みたいな考えはあったりしますか?

hide:

いや~、どうでしょうね。でも、『アナザーエデン』とか、良くできている作品は評価されていますからね。そうでないものは、少しずつ淘汰されていくんじゃないかなと思います。やっぱり、良い作品はちゃんと評価されてほしいですから。

ゲーム音楽とその界隈について

Sinon:

hideさんの周りにいる人って、ゲーム音楽ファンだらけだと思うんですが。

hide:

まあ……(しばし考えて)、はい。

Sinon:

そこ考えるところだったんですか(笑)。
それで、その世界に居てゲーム音楽の記事を書いてると、実はすごい狭い世界の中で自分の発信をしてるんじゃないかなって思うことはありますか?

hide:

それはありますね。ゲーム音楽のライター、という自分を客観的に見ると、だいぶニッチだなと思うんですよ。ゲームライターや音楽ライターと呼ばれる人はたくさんいると思うんですけど、“ゲーム音楽に詳しいライター”という人はたぶん、だいぶ限られてくるんじゃないかなと思います。

Sinon:

それをhideさんとしては、「そこのニッチな世界のファンに向けて発信していこう」という気持ちが強いのか、それとも、「その殻を破ってもっと世界を広げていきたいんだ俺は!」という気持ちが強いのか、どちらなんでしょうか?

hide:

うーん。どちらかというと、一般の方も含めたより多くの人にゲーム音楽というものの楽しさを知ってもらえたらいいなという感じですね。

Sinon:

もっと多くの人に。

hide:

はい。

(参加者):

一般の人に向けて、っていう点ではここ毎年「題名のない音楽会」でゲーム音楽特集が取り上げられていたり、NHKで「シンフォニックゲーマーズ」などもあったり、ゲーム音楽キテるな!的な感じはしてます?

hide:

じわじわと認知は広がっているのかなとは思いますね。

(参加者):

でもどうなんだろうね、普通の人からみたら。ゲーム音楽の認知度って。

hide:

どうなんでしょうね。ただ、たとえば何百年も前からあるオペラって、ひとつの物語を人間の演技や音楽で演出する舞台芸術ですよね。そう考えた場合、ゲームでもさまざまな登場人物が出てきて演技して物語を紡ぎ、音楽がそれを盛り上げるわけで、“物語を演出するための音楽”という意味ではそれほど大きな違いはないんじゃないかなと思うんですよね。

Sinon:

ゲーム音楽がクラシック音楽と同じような地位まで行くには、行くとしてもだいぶ先かも知れませんが、ポップスの一ジャンルとしてはもう充分認知されているんじゃないでしょうかね。音楽の教科書に掲載されたこともありましたし。20年前とかと比べて、何かしらゲームをやってるっていう世代は圧倒的に増えてるはずですし。

hide:

そうなんですよ。今、社会に出て何かしら仕事をして活躍している人って20代以上くらいの方々だと思うんですけど、小さい頃にゲームをプレイしていた人はそこそこ多いと思うんですよ。ゲームに親しんできて、ゲームに理解のある人というのは今後じわじわと増えていくはずなんですよね。

おわりに

Sinon:

他には何か聞きたいことないでしょうか?

一同:

うーん。

(参加者):

あっ! きのことたけのこどっちが好き?

hide:

(笑)、僕はたけのこ派です。きのこ派から総攻撃受けそうですけど(笑)。

Sinon:

あ、そうだhideさんはご自身でもインタビューとかをするじゃないですか。インタビューをするときに、〆の質問みたいなのは考えたりするんですか?

hide:

最後にお聞きすることが多いのは、「ファンの方へのメッセージをお願いします」という質問ですね。

一同:

あ~。

(参加者):

じゃあ、hideさんもファンの方へのメッセージを(笑)。

一同:

(笑)

hide:

ちょ、まさか自分自身が言うことになるとは!(笑) 
えー、僕の記事を読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。記事を面白かったですと言っていただいたり、ご紹介したゲームをプレイしてもらえたりといった何かしらの反応をいただけたときは本当に嬉しいですし、記事を書くエネルギーになります。これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします!

少し昔話になるんですけど、昔はゲーム音楽のコンサートに行っても、終演後に話せる人がいなかったんです。コンサートの興奮を分かち合える人がいなくて、一人で帰っていました。でも、その後、植松さんのファンサイトやトライノートなどでたくさんのゲーム音楽好き仲間に出会うことができて、「この曲いいですよね!」とか、そういうことを語り合えて、共に分かち合えたのがすごく楽しかったんですよ。気がつけばゲーム音楽の世界にどっぷりハマっちゃいました(笑)。ゲーム音楽って本当に奥が深くておもしろいので、これからもとことん追求していきたいと思います。
……というか、まさかこういう形でインタビューしていただけるとは思いませんでした(笑)。
ありがとうございました。

(参加者):

今回のインタビューで、hideさんが全然ブレていないのが素晴らしいなと思いました。ちゃんと自分らしさを考えているというか。

Sinon:

じゃあ、〆ますか。hideさん、今日は長い間貴重なお話ありがとうございました!(拍手)


※2019年5月12日(日)に「演奏会の裏方に訊く!」というテーマでVol.2を予定しています。詳しくはこちらを御覧ください。
https://twitter.com/trinote_info/status/1107992116779577344